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島田雅彦『パンとサーカス』(講談社文庫、2024年)読了!700頁は長いが読んで良かった。

島田雅彦の『パンとサーカス』を読んだ。文庫版で約700ページ。昼休みに少しずつ読んで7週間かかった。大部な作品だが読んで本当によかった。

島田雅彦の作品をちゃんと読むのは意外にも初めて。大学時代には日本文学を勉強していて教授の口からも何度も聞いていた名前だったが、読んだことはなかった。にもかかわらずこんなに長い本を読み始めたのは、文庫版の解説を書いている内田樹が自身のブログで文庫版の出版前に解説をアップしていて、それを読んで面白いと思ったから。本編だけでなく解説もオススメです。

解説の感想から書き始めてしまいましたが、この小説の主な登場人物は3人。東大法学部卒でアメリカに留学しCIAのエージェントとなる御影寵児、暴力団・火箱組の跡取り息子ではあるが御影の友人で世直しのためにダークサイドで暗躍する火箱空也、火箱空也の腹違いの妹の桜田マリア。

アメリカの「属国」ではない日本を目指し日本国内で革命が起きたらどうなるか。この群像劇は、そんな姿を見せてくれます。

この小説の魅力は、息もつかせぬ速さで進む痛快な群像劇というところにあると思います。日本人のCIAエージェントを主人公にした、大きなストーリーは、純粋にエンタメとして面白く、昼休みが終わって、ページを閉じなければいけないのが毎回惜しい気持ちになりました。

一方で、この小説が喚起する想像力の意味も考えずにはいられません。この小説を読む前は、「日本で革命が起こるなんて奇をてらいすぎた設定なのでは?」と思っていました。しかし、読み終えてみると起きていないのが不思議に思えてきます。小説の世界に没入した後にもう一度現実世界を眺めてみると、また違った世界が見えてくるような気がします。

島田雅彦ってすごい作家ですね。初めて読んだのですが一気に大好きになりました。