リーマンリーディング

本と言葉と世界を読む

佐藤豪竜『働き方の科学--エビデンスが明かす「健康」も「生産性」も手に入れる方法』(ダイヤモンド社、2026年8月)

佐藤豪竜『働き方の科学--エビデンスが明かす「健康」も「生産性」も手に入れる方法』(ダイヤモンド社、2026年8月)を読みました。

著書は、厚労省出身で、現在は慶応大学の専任講師。社会疫学や医療経済学が専門の著者が、研究成果に基づく知見を分かりやすく紹介してくれています。

例えば、次のような知見に目が止まりました。(特に私は職場における役割って大事だよなと思います。)

・長距離通勤をしている夫婦は、離婚のリスクが40%高い

・通勤に往復1時間以上かかる人は、30分未満の人と比べて抑うつのリスクが16%高い

・出世による満足感は1年しか続かない

・「役割が曖昧であること」が、職場における最も強いストレス因子

そして、この本を読んで漠然と感じたことは、私が思っている以上に仕事の量を減らした状態こそ、健康、やりがい、報酬の面ではバランスが取れているのではないかということです。現代人はついつい働きすぎてしまっているのかもしれないですね。

『キングダム』第80巻読了

80巻は趙の王都・邯鄲に秦軍が攻め上る回です。

これまで常に秦を苦しめてきた趙も絶体絶命かと思いきや、やはり李牧はさすがですね。しかしこれは秦が挟み込まれたとも見れますが、趙の背後にも秦軍がいるともわけで、81巻が楽しみです!

また、史実に照らせば、李牧は秦の外交、工作の前に失脚してしまうわけですが、そのあたりの描き方、趙王との関係性の展開も気になります。

原武史『象徴天皇の実像 『昭和天皇拝謁記』を読む』(岩波新書、2024年10月)

原武史『象徴天皇の実像 『昭和天皇拝謁記』を読む』(岩波新書、2024年10月)を読みました。

『昭和天皇拝謁記』とは、初代宮内庁長官・田島道治(在任1949-53)が昭和天皇とのやりとりをまとめたものです。昭和天皇の口癖も含めて、わりとやりとりが忠実に描かれているようです。

この著作をもとに、日本政治思想史の研究者である著者が昭和天皇の考え方に迫るという新書です。

本書を読んで意外に感じたのは、皇室とキリスト教との近さです。(昭和天皇ご自身も改宗を検討されているとの発言もあったそうです)

また、拝謁記にある年代まででは、象徴天皇制というのは現在のような像を結んでいないようにも思われます。この時期以降に、次第に出来上がってきたものなのかなと推察されました。

なかなかとっつきにくいテーマですが、非常に読みやすい新書でした。

笠原英彦『皇室典範ーー明治の起草の攻防から現代の皇位継承問題まで』

笠原英彦『皇室典範ーー明治の起草の攻防から現代の皇位継承問題まで』(中公新書、2025年1月)を読みました。

表題どおり、皇室典範をめぐる歴史が書かれています。今年7月に皇室典範の改正法が成立したので、いま読めば、非常にタイムリーな内容となっています。

個人的に面白いなと感じたのは、明治の時代から、女性天皇の可能性は議論されていたということです。あり得る可能性、論点としては、古いものなんですね。

また、最終章が象徴天皇制との関係に当てられていることも印象深かったです。先般の皇室典範等の改正は、皇族数の確保ということに主眼があり女性皇族の身分の保持と、養子という2つの対応策が示された訳ですが、審議の状況などの報道を見る限りでは象徴天皇制というものをどのように考えるのかというところまでは、あまり議論が及ばなかったのかなという印象があります。

そういう観点においては、昨今のアクチュアルの文脈と関わりがありながらも、視野を目の前の文脈から広げてくれる良書だと思いました。

久しぶりに三島由紀夫の『春の雪』を読んで圧倒された件

久しぶりに三島由紀夫の『春の雪』を読んで圧倒されました。

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春の雪は、「豊饒の海」4部作の第一巻を構成する恋愛小説で、2005年には妻夫木聡と竹内結子の主演で映画化もされましたね。

学生時代にも映画を観たついでに4部作の一巻目だけは読んだことがあったのですが、今回久しぶりに手に取ると、言葉の美しさ、緻密さに改めて驚愕しました。

そして、ストーリーは綺麗な細部が寸分の狂いもなく編み込まれて壮大な全体を構成しているといった趣き。圧倒的な豊かさを感じます。

細部の描写からは、明治末年から大正初期の頃の華族社会の雰囲気を感じ取ることができます。松枝清顕の思考からは倒錯した美意識のようなものを感じます。事が露見してから、聡子の気持ちを誰も考えることもなく弥縫策にてんやわんやする家族の群像劇はどこかコメディのようにも受け取れます。

誰にも言えない秘密を抱えたり、逆に事を無事に落ち着けるための手はずを整えたりすることは、物事全体をコントロールできているような万能感をもたらすんだよな…と、本書後半の描写を読んで思ったりもしました。

聡子がこどもを「始末」することについてどう考えていたのか、出家することについてどう考えていたのか、はっきりとは書かれていませんが、聡子の強い意志が感じられる行動に厳粛な気持ちになりました。

文庫版の解説によれば、三島はインタビューで一巻目は古典的恋愛小説(たおやめぶり)、二巻目は英雄的な行動小説(ますらおぶり)、三巻目はエキゾチックなバロックふうの物語(異国ぶり)、最終巻はSFじみたアヴァンギャルドふう、の構想を持っていたようです。二巻以降も気になります。

河田皓史『働く人が減っていく国でこれから起きること』(朝日新書、2026年)

河田皓史『働く人が減っていく国でこれから起きること』(朝日新書、2026年)を読みました。

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筆者は元日銀の職員で、現在はみずほ総合研究所調査部に所属するエコノミスト。ご本人も、独身単身者でFIREを目指しているとのことで、そういった視点からもなかなか面白いテーマが書かれています。

私が印象に残ったところを備忘録的に残します。(必ずしも本書の主張の本丸の部分ではないかもしれませんが)

個人としても専門性を高める意識が必要?

「働かないおじさん」という言葉を聞くようになって久しいですが、そのような従業員が生じるのには日本企業の幹部選抜のあり方が影響を与えているのかもしれません。日本企業は、幹部候補の選抜のために20年以上も社員を競わせます。

しかしながら、幹部になれなかった社員は、エンゲージメントを失い、転職の難易度も上がり、転職の可能性が低いがゆえに自社に対する交渉力も失い、「働かないおじさん」化してしまうようです。(第一部第一章)

一個人としてみても、エンゲージメントの低い状態で働くことはなかなかつらいものがあるでしょうし、できることならば高い評価を受けながら働く方が好ましいと思います。

そのためには中高年の薄い転職市場においても評価される専門性や技能などが重要になってくるのかな?

本書では直接語られているわけではありませんが、こういった全体の構図を踏まえて、個人としてどうするかという視点が重要だと感じました。

人口3千万人台の日本

国立社会保障・人口問題研究所の長期予測によれば、現在よりも出生率がさらに低下するという前提に立てば、2110年代には人口は3千万人台まで減少するとのこと。(第二部第三章)

仮に3千万人で今と同じ経済規模を維持するには、1人あたり4倍の労働生産性が必要になる計算です。著者が提案する解決策は、無駄な会議をやめる、無駄な忖度をやめるなどを通じて、生産性を高めていくという、一見、地味なものです。

さらに具体的には、「毎月10分の無駄をなくす」ことを提案します。こういった問題に、劇的な解決策はないのかなと思わせてくれます。私も目の前の取り組みをしっかりやっていこうと思いました。

島田雅彦『Ifの総て』(新潮社、2026年)読了

島田雅彦『Ifの総て』(新潮社、2026年)を読みました。

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生成AIによるタイムマシーンを駆使して、歴史のIfをたどるという設定の小説。島田雅彦らしい軽さやバカバカしさがあって、一方であり得た世界を真面目に想像させてもくれる小説。

生成AIという存在を、小説の中の不可欠の設定として取り込んでいるという意味でも面白い小説でした。