久しぶりに三島由紀夫の『春の雪』を読んで圧倒されました。

春の雪は、「豊饒の海」4部作の第一巻を構成する恋愛小説で、2005年には妻夫木聡と竹内結子の主演で映画化もされましたね。
学生時代にも映画を観たついでに4部作の一巻目だけは読んだことがあったのですが、今回久しぶりに手に取ると、言葉の美しさ、緻密さに改めて驚愕しました。
そして、ストーリーは綺麗な細部が寸分の狂いもなく編み込まれて壮大な全体を構成しているといった趣き。圧倒的な豊かさを感じます。
細部の描写からは、明治末年から大正初期の頃の華族社会の雰囲気を感じ取ることができます。松枝清顕の思考からは倒錯した美意識のようなものを感じます。事が露見してから、聡子の気持ちを誰も考えることもなく弥縫策にてんやわんやする家族の群像劇はどこかコメディのようにも受け取れます。
誰にも言えない秘密を抱えたり、逆に事を無事に落ち着けるための手はずを整えたりすることは、物事全体をコントロールできているような万能感をもたらすんだよな…と、本書後半の描写を読んで思ったりもしました。
聡子がこどもを「始末」することについてどう考えていたのか、出家することについてどう考えていたのか、はっきりとは書かれていませんが、聡子の強い意志が感じられる行動に厳粛な気持ちになりました。
文庫版の解説によれば、三島はインタビューで一巻目は古典的恋愛小説(たおやめぶり)、二巻目は英雄的な行動小説(ますらおぶり)、三巻目はエキゾチックなバロックふうの物語(異国ぶり)、最終巻はSFじみたアヴァンギャルドふう、の構想を持っていたようです。二巻以降も気になります。



