年末年始に台湾・香港に行きました。海外旅行は学生時代から好きで、働き出してからも暇を見つけて、アジアを中心に旅行してきました。
香港を訪れるのは今回が初めて。ありきたりではあるけれど、香港に関する本を読んでいこうと沢木耕太郎『深夜特急1 香港・マカオ』を手に取りました。
第1章では、筆者が旅に出る理由が、デリーから乗り合いバスでロンドンまで行くことであると明かされます。
しかし旅行代理店のスタッフから、デリーまでの間の2か所で滞在可能なチケットであることを知り、香港とバンコクで降りることに決めたとのこと。
ストップ・オーバーができる、それも二カ所も、となると、どこにも寄らずデリーに直行してしまうのが急にもったいなく思えてきた。私はインド航空の寄港地を訊ね、少し考えたあとで、《東京─デリー》のチケットを《東京─香港─バンコク─デリー》のチケットに作り換えてもらうことにした。
(「第二章 黄金宮殿 香港」)
『深夜特急』の第1巻と2巻は、いわば長いプロローグなんですね。
なぜ旅をするのか
なぜ旅をするのか。それも乗り合いバスでデリーからロンドンまでというバカバカしい旅をするのか。第一章から筆者の言葉を引いてみよう。
なぜユーラシアなのか。それもなぜバスなのか。確かなことは自分でもわかっていなかった。日本を出ようと思った時、なぜかふとユーラシアを旅してみたいと思ってしまったのだ。 理由はなかった。だが、そのユーラシアを陸路で行こうと決めたのには、僅かながら理由らしきものがないではなかった。日本を離れるにしても、少しずつ、可能なかぎり陸地をつたい、この地球の大きさを知覚するための手がかりのようなものを得たいと思ったのだ。
(中略)
ほんのちょっぴり本音を吐けば、人のためにもならず、学問の進歩に役立つわけでもなく、真実をきわめることもなく、記録を作るためのものでもなく、血湧き肉躍る冒険大活劇でもなく、まるで何の意味もなく、誰にでも可能で、しかし、およそ酔狂な奴でなくてはしそうにないことを、やりたかったのだ。
(「第一章 朝の光 発端」)
前もって確認してきた観光スポットを効率よく確認するのでもなく、またより高次の大目標な回収される旅でもない旅を筆者はしたかったのではないかなという気がしてくる。そして、サラリーマンが海外旅行をすることに限って言えば、限りある時間と体力を使って旅に出ているのであるから、事前によく調べ、効率よく観光地やお店を回りたいと考えるのが普通だ。そんな旅では、何かを見逃してはいまいかと感じなくもない。予定調和ではない、ぶっつけ本番の旅の姿を筆者は描いてくれているようだ。
出会い
本書の中で描かれる印象的な出会い少し紹介したい。7、8歳の少女との出会いだ。
どれくらい遊んでいたろう。あまり遅くなってもいけないと思い、アドレスを交換して別れることにした。(中略)自分の住所は書こうとしない。紙を渡してうながすと、陳美華、とだけ書いた。君の住所は? 私が訊ねても不思議そうに見つめ返してくるばかりなのだ。住所、住処、居処などと思いつくままに試みているうちに、やっと私の求めているものがわかったらしく、大きく頷いた。(中略)そこには、こう書いてあった。
陳美華 湖南街
彼女たちは水上生活者だった。住所を持っているはずがなかったのだ。彼女の明るい笑顔に胸を衝かれた。
(「第二章 黄金宮殿 香港」)
どうやら『深夜特急』では全く新しいものとの出会いが描かれているようだ。この旅の終わりに、ロンドンにたどり着いたとき(いや、そもそもたどり着くのだろうか)、筆者がどのような感慨を抱くのか、どのように変化しているのか、楽しみになってきた。